※この記事は2017年1月2日・9日合併号のタイヤ新報に掲載されたものです。

 

力強い個人商店

 

 今回は東京都練馬区の大泉学園駅から徒歩10分の住宅街にある「カーショップ・トム(㈲山口興業)」にお邪魔してきた。同社では自動車販売を中心として、中古車買取・査定、タイヤ交換、ドレスアップなど、ユーザーの車をトータルでサポートしている。

 スタッフは代表取締役の山口勉さん(39)の他、アルバイトが2名という少数精鋭ではあるものの、年商は約1億円と力強い業績を維持し続けている。

 今後、個人商店が生き残っていくためには何を残し、何を変えればいいのか。そのヒントを探ってきた。

 

①

お店の外観

 

創業当初と今の違い

 

―創業当初の様子から教えてください

 

 『二十歳の時に、農家だった実家の広い土地を利用して始めました。創業当初はユーザー車検制度が出来て何年か経った後だったから、まだ改造車が多かった。車検代も高かったので、そういう車を車検が通るようにする仕事が多かった。当時は儲かっている自動車屋さんが多かったから、どこも高かった。それよりも「安く買える」「安く修理できる」と口コミで聞いたら、街道沿いじゃなくてもお客さんは来てたんですよね。』

 

―今の客層は?

 

 『今は固定のお客さんや口コミ、インターネットを見て来る方が多いですね。ほとんどが個人。客層はバラバラですね。つい先日はベンツの中古車を納車しました。そんなに台数は多くないですが、650万から700万のレクサスなどの新車が売れることもあります。』

 

―今の経営環境はどうですか?

 

 『苦戦しているところって「集客が難しい」とか、集客が取れても「単価が安い」とかだと思うんですよね。そこに土地代や人件費がかかるから大変になる。僕の場合は実家の土地で経営しているので土地代はゼロだし、社員も僕一人なので、そのコストを抑えられているのが大きい。規模を小さくすれば何とかやっていけるのかなと。』

 

元々はSS勤務だったが車が好きだったので二十歳で創業した山口さん

 

 

持ち込み対応もOK

 

―価格問題への対策は何か考えていますか

 

 『メーカーにはもう少しネットの価格を管理してくれたらありがたいとは思うんですけどね。ただ、僕は諦めているというわけじゃないけど、安いところがあるんだったら、そこで買ったほうがいいと思っているので、「うちで買ってよ」と無理なお願いはしません。お客さんを損させてしまうので。その場合は「じゃあ安いところで買って、うちに送って下さい。取り付けはしますから」という話に切り替えちゃっていますね。』

 

―そう言えばガレナビに登録されていますよね。取り付けや持ち込みの依頼は多いんですか?

 

 『結構多いですね。16~17インチのタイヤ4本を組めば1万円くらいにはなるので、それをどう考えるかですよね。うちみたいに小規模でやっていると欠かせない収入になってくるのかなと。タイヤ交換4本でアルバイト一人の日当が出るって考えれば悪くないのかなとは思います。』

 

―最近のユーザーの動向はどうですか?

 

 『タイヤに関しては価格を求めてくる方がほとんどですね。タイヤにこだわる人はいません。1~2年くらい前までは「日本製なら何でも」という人が多かった気がしますけど、最近はアジアンタイヤの性能も良くなって「本当に何でもいい」という人が増えています。ただ、さすがに抵抗がある方もまだいるので、「予算をどうしても抑えたい」という方には「一回使ってみたらどうですか?」と話はします。使ってみて「全然だめだった」という人は減ってますね。』

 

今後の生き残り方

 

―競合他社との差別化で取り組んでいることは?

 

 『他社と比較してとかはあんまり考えません。お客さんのニーズをきちんと汲んだ上で提案して、緊急の方には夜間・休日関係なしに対応することぐらい。お客さんを持っていかれちゃうのは嫌だけど、お客さん第一で考えれば本人が得だと思うところで買うのが一番いいと思うので、あんまり気にしません。』

 

―今後、個人商店が生き残っていくために必要なことは?

 

 『インターネットは極端に安いし、もう金額での勝負ってのは絶対に不可能だから…。地道に固定客を増やしていくしかない。仕入れ値はもう限界に来ているので、大量に仕入れて安く売っても売り切れないし、最近はお客さんも勉強しているから、1~2年経ったタイヤを売ることもできない。とりあえず電話をもらったらすぐ対応することですね。今年は雪が降ってオートバックスは6時間待ちとかだったけど「そんなに待ってらんない」という近所の人が来ました。フラフラッと来てもらえれば対応します。』

 

―今後の目標があれば教えて下さい。

 

 『「このままのスタイルで細く長く続けていきたいと思います」としか言えない(笑)』

 

まとめ

 

 取材中に訪れたユーザーに対して山口さんが接客するのを見る機会があった。その対応は硬すぎず、しかし丁寧で親身だった。  会話を交わす中で相手の要望を少しずつ聞き出し、それをきちんと汲み取った上で提案をする。「お客さん第一で考えないと」と語る山口さんの人柄がよく現れていた。  さらに取材の終わりには「子どもと近くの公園で遊びたいので駐車場をお借りしていいですか?」というユーザーも。山口さんは「どうぞ。うちにはこれぐらいしか出来ませんから(笑)」と明るく快諾していた。地域で必要とされるお店のあり方を見た瞬間だった。(針谷)

 

店舗概要

 

▽社名…㈲山口興業

▽代表取締役…山口勉(39)

▽店名…カーショップ・トム

▽住所…〒178-0063 東京都練馬区東大泉7-34-33

▽TEL…03-3921-8199

▽FAX…03-3921-8175

▽年商…約1億円

▽販売構成…車両販売70%、タイヤ10%、ホイール10%、その他用品販売・整備で10%。

▽創業年…1998年

▽定休日…不定休

▽従業員数…アルバイト2名

▽主に取り扱うブランド…横浜ゴム

▽紹介…農家だった実家の土地を利用して創業したカーショップ。自動車販売を中心として、中古車買取・査定、タイヤ交換、ドレスアップなど、ユーザーの車をトータルでサポートしている。常勤で作業するのは代表の山口さん一人というミニマムな体制ながらも、地道な経営努力で年商1億円と力強い業績をキープしている。