※この記事は2015年5月4日・11日合併号のタイヤ新報に掲載されたものです。

 

はじめに

 

 自動車タイヤの性能差をユーザーに伝えることは難しい。メーカーも小売店も様々な工夫でもって、タイヤへの関心を高めようとしているが、今回訪れたお店「橋本ゴム商会」(愛媛県高松市)もその一つだ。

 「タイヤを変えても人間が車を直接動かしているわけではないから、違いが分かりにくいのは当然です」と同社の橋本仁志代表は言う。

 では、一体どうやってユーザーにタイヤの性能を伝えているのだろうか? 経営方針などとともに取材した。

 

橋本ゴム商会①松山市で創業50周年を迎える「橋本ゴム商会」

松山市で創業50周年を迎える「橋本ゴム商会」

 

人間を売る

 

 ネット販売等の影響により価格で勝負することを止めた専業店は多いだろう。橋本氏も、

 『値下げ合戦で勝負すると、一時は勝つことがあっても、もっと安く販売するところが現れたらそっちに流れます。それでは長く続きません』

 『だから技術などを通して、人間を売っていくことが大事だと思います』と語る。

 

穴がなくても漏れる

 

 しかし、専業店の技術が生きるのはどういう時なのだろうか?

 『たとえば、穴が見えないのに空気が漏れることってあるんですよ。何軒か持っていったけれど何が原因なのか分からない』

 一見異常がないのに、空気が漏れるケースはいくつかの原因が考えられるという。

 『たとえば、本当にミクロな穴が空いているときです。そういう時は水に漬けても、細かい気泡が入水時につくので場所が分からないんですよ』

 ではどう探すのか?

 『石けん水を表面に塗って水に漬けるんです。そうすると小さぁ~い泡がポコポコと出てきて場所が分かる』のだそうだ。

 少し漬けても分からず、5分ほど経たないと泡は出てこないらしい。また、タイヤではなくホイールに原因がある場合もある。

 『ホイールのリム表面が数年かけて酸化し、わずかに盛り上がるときがあるんです。年単位でおこる変化だからタイヤ内面もその凸に対して凹と変化する。この場合はタイヤとホイールは密着しているから空気は漏れません』

 ところが、この凸ホイールのままで新品タイヤに交換すると、

 『新品タイヤの内部は平らです。凸なものに平らな内面を押し当てるから隙間が生まれ空気が漏れます』

 新品だからこそ空気が漏れるというのは面白い。他にもホイールのピンホールという現象というものがあるという。

 『ホイールの製造時に不純物が混ざっていると、燃えて二酸化炭素が発生します。二酸化炭素は重いので下に落ちるのですが、その軌跡上に目に見えない穴が空き、空気が漏れるのです』

 どこに行っても解決できなかった不具合が直ったら、ユーザーの喜びもひとしおだろう。

 

損傷ホイールの修正

 

 橋本代表は、20年以上前に、広島県の業者からアルミホイールの修正機を購入、1か月の住み込み修行を経てノウハウを身につけた。

 『初日からいきなり仕事をさせられて驚きました。できるわけがないのに、毎日罵られてね(笑)』

 ホイールの修正を行うようになると、その良し悪しが身を持って体験できるらしい。

 『良いホイールは弾力があるから曲げやすいんです。反対に悪いホイールは相当熱しない限り、曲げにくいんです』

 実物に触れて身に着けた知識ならホイールも自信を持って販売できるのだろう。

 『この技術は覚えてよかったと思います。我慢をして覚えたかいがありました(笑)』

 

自転車タイヤで比較

 

 橋本代表の販売方法はクルマのタイヤを買いに来たユーザーに自転車に乗ってもらうというとてもユニークなものだ。メーカーが転がり抵抗の比較などで自転車を使うのは知っているが、販売店では初めて見る。

 『いい自転車タイヤといい自動車タイヤは構造が似ているんですよ。たとえばこの自転車タイヤのベルトはクロス織りの繊維をサイドウォールまで延長しているんですけどクルマのプレミアムタイヤにも似たような構造ってありますよね』

 確かに、「サイドウォールまでの延長」はトランパスの「スーパーハイターンアップ構造」、「クロス織り」はアドバンの「マトリックス・ボディ・プライ」などを連想する。

 『この自転車に乗ってちょっと周りを回ってきてください。転がり抵抗、しっかり感、グリップ力、操安性、全部普通のタイヤと違いますから』 

 勧められるまま、お店を出てぐるっと回る。確かに全然違う。快適なので遠出をしすぎ、戻るときに少し迷ったほどだ。  『スゴイでしょ。この自転車自体はたいしてよくないんですよ。スゴイのはタイヤなんです。自転車の場合、人間が自力で漕ぐから、その性能が足に、腰に、手に直接伝わるんですよ』

 しかし、乗りたがらないユーザーも多いのではないか?

 『もちろんいらっしゃいますから、ムリには勧めません。でも、乗っていただいてタイヤの大切さを実感してもらうと、若干値段が割高でも性能で選んでいただけることが多いと思います』

 

橋本ゴム商会③試乗用の自転車

試乗用の自転車

 

タイヤを置かない店

 

 独自の販売法を行う「橋本ゴム商会」。最後に、将来の目標を聞くと、

 『店内でタイヤの匂いってします?』  と逆に質問を受けた。もちろんする、と答えると、  『やっぱりするんですか! いや、私みたいに毎日店内にいると匂わなくなるんですよ。でも一般のお客様はゴムの匂いが漂っているだけで入りにくいと思うんです。だから、タイヤは陳列しなくてもいいかもしれませんね。そんなお店にすることも視野に入れてこれからも頑張りたいと思います』  (荒川三郎)

 

橋本ゴム商会②「人間を売るしかないんです」と橋本代表

「自転車もクルマもタイヤは似てます」と橋本代表㊧

 

店舗概要

 

▽代表取締役 橋本仁志(52)

▽創業 1959年1月

▽〒790-0921 愛媛県松山市福音寺町255-4

▽TEL 089-975-8052 ▽FAX 089-976-4771

▽URL http://www.hashimotogomu.com/

▽営業時間 平日:8:30~20:00/日・祝日:9:00~18:00

▽定休日 なし  

※タイヤ・ホイール及び自動車部品の小売販売・卸販売、 アルミホイール修正。