はじめに

 

滋賀県タイヤ商工協同組合は9月27日、同組合の独自の取り組みとして「タイヤバースト体感研修会」を滋賀運輸支局(滋賀県守山市)で開催した。

研修会には、タイヤの販売・交換・修理などを行う県内の自動車整備業者のスタッフら約50名が参加し、タイヤバーストの危険性について、講習や実験を通して学んだ。

 

なお、この記事ではPC用、LT用、TB用の各タイヤのバースト動画を掲載している。バーストの危険性や恐ろしさは、写真や文章だけでは伝わりづらい部分もあるので、こちらもぜひチェックしてほしい。(ハリガヤ)

 

 

開催の狙い

 

人物 エトキ=山北定之理事長

山北定之理事長

 

滋賀県では昨年12月、甲賀市内のSSでTB用タイヤがバーストし、男性従業員が死亡する事故が発生している。また、今年7月には大津市で渋滞停車中のバスの前輪タイヤがバーストし、乗客3名が負傷するなど、県内では重大事故が多発している。

 

「滋賀県内の事故を無くしたいという想いで、この研修会を開催しました」

 

 そう語ったのは、研修会で挨拶に立った滋賀県タイヤ組合の山北定之理事長(タイヤプラザフリー)。

 

「タイヤの側面のわずか小指一本分の面積に何㌧もの気圧がかかって、暴発する。その危険性を今日は充分理解して帰ってもらいたい」

 

開催費用は同組合の事業費と中小企業庁の助成金で賄い、研修会への参加費は無料。

バースト実験のノウハウや機材はBTJからの提供で、イベント開催は滋賀県自動車整備振興会やメーカー各社の後援で実現した。

 

 

講習会

 

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講習を担当した川村さん

 

研修会はまず座学の講習からスタート。講習を担当した川村氏(川村タイヤ)は、作業現場の安全確保のためには危険察知能力の向上を図ることが大切だとした上で、「特に引きずり痕の見落としには注意して欲しい」と語った。

 

引きずり痕の見落としによるバースト事故は、昨年4月に岩手県のタイヤショップでも発生している。また、2005~9年で発生した事故のうち、引きずり痕の見落としが原因の事故は54%だった(JATMA調査)。

 

「パンク箇所を見る時は必ずタイヤをリムから外して引きずり痕の有無を確認して下さい。引きずり痕がない場合もコードが疲労している可能性があるので、必ず使用者からパンク状態での走行期間や距離を聞くようにして下さい」

 

その他にも講習会では、空気充填時の遵守事項の確認、安全対策機器の紹介を行なったほか、空気充填特別講習会受講の必要性やメリットを説明した。

 

 

バースト実験「PC用タイヤ」

 

①PC用01 バースト前

 

講習会後は屋外に移動して、バースト実験。事前に内部のスチールコードを切断したタイヤ3種類を用意し、PC、LT、TBの順にバーストさせた。

 

「バースト直前にタイヤからプチプチ音が聞こえるので注意して聞いて欲しい」と川村氏が話すと、まずはPC用タイヤから空気が充填された。PC用は、300kPaまで充填した時点で「プチ…プチ…」と音が聞こえ、360kPaを超えた瞬間に「パーン」と破裂音が響き渡った。

 

①PC用02 バースト後

 

バーストの瞬間には、実験用の人形の頭部が真上に吹っ飛び、強い風圧でボディ全体も地面から大きく浮いていた。

 

 

 

バースト実験「LT用タイヤ」

 

②LT用01 バースト前

 

LT用は、520kPaでPC用より強く短い「パンッ」という破裂音でバースト。人形の頭部や腕などのパーツは一瞬で宙に舞い上がり、カメラの画面からも見切れてしまった。

 

②LT用02 バースト後

 

 

 

バースト実験「TB用タイヤ」

 

③TB用01 バースト前

 

最後のTB用は、390kPaまで充填した段階で「プチ…」と音が微かに聞こえ始めるも、バーストまで少し時間がかかった。

500kPaで「プチップチッ」と音がハッキリ聞こえ、間もなく520kPaでバースト。

 

③TB用02 バースト後

 

TB用の破裂音は「パン」ではなく「ボン」。猛烈なエネルギーが瞬間的に放出され、人形は10m以上も横一直線に吹っ飛ばされ、飛来防止の安全囲いも「がしゃーん」と鈍い金属音をたてて倒れた。

 

 

これがもしも生身の人間だった場合はどうなるのか。実験のノウハウを提供した、BTJ近畿四国技術サービス部の霞知衡氏に話を伺った。

 

「人形ほど飛ばされることはありませんが、爆風で倒れて頭や全身を強く打って死亡する、もしくは、口から入ったエアーが内蔵を損傷・破裂させてしまうケースもあります」

 

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人形のボディは完全に歪んでしまっていた

 

実験終了後の質疑応答では、目の前でバーストを体感した参加者が熱心に組合員の解説に耳を傾けていた。

 

 

後記

 

滋賀県組合にとってバースト研修会は初めての開催だったが、その進行は驚くほどスムーズで、組合員の企画力・行動力・団結力の高さが伺えた。

 

タイヤ業界では毎年、メーカー、組合などの関連団体が様々な安全啓発を行なっているものの、空気充填事故は後を絶たない。

 

頭では「危ない」と分かっていても「自分は大丈夫」と過信して事故に遭う、というのはよくある話だが、たとえ万全の対策を期したとしても、人間が作業する以上、事故の危険性はつきまとうものだ。

 

その中でどうやって事故を未然に防いでいくのか。

 

滋賀県タイヤ組合が今回開催したタイヤバースト研修会から学ぶところは多い。