大河ドラマと家紋

 

石垣マニアの島立です。昨年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」良かったですね。小ネタ満載で一部戦国マニアにとってはたまらない内容だったと思います。特に、官兵衛が有岡城の地下牢に幽閉されている時に見た藤の花を家紋にするエピソードが個人的には一押しでした。ちなみに、東洋ゴムのテクニカルセンターのすぐ近くに有岡城の遺構をみることができますね。

NHKの大河ではではしばしば家紋がクローズアップされます。「軍師官兵衛」の後、「花燃ゆ」が始まりましたが、第一話に毛利の家紋「一文字三星」が一瞬登場していましたよね。戦国武将など「家」の象徴ともいえるものですので、この一瞬で明確に毛利領内の出来事だということを視聴者に印象付けることができるわけです。

この「家紋」に注目してドラマを見るというのは、個人的におすすめの見方です。是非注目してみてください。

 

 

家紋と石垣

 

現代では、仏壇やお墓以外でそうそう家紋を目にする機会はないかもしれませんが、東京や大阪に在住の方なら、都会の真ん中でもう大量にみることができます。といっても家紋らしい複雑なデザインではなく簡略化したマークのようなものが多いのですが、江戸城(皇居)や大阪城で使われている石垣のそこかしこの表面に刻まれているんです。これら印が刻まれた石は「刻印石」と呼ばれています。

 

 

刻印石とは?

 

石垣を構成している石で、表面に様々な印が刻まれてある石のことです。家紋そのものの印も、もちろんありますが、○△□といった単純なものからそれらを組み合わせたもの、卍、五芒星など一見宗教的に思われるもの、数字、経文などなど様々、おそらく数百種類はあると思います。また、大名等人の名前、経文などといった文字が刻まれていることもあります。

 

 

観察のポイント

 

近世城郭の多くで見ることができますが、江戸幕府の天下普請で造られた城では特に多く見ることができます。具体的には江戸城、大阪城、篠山城、名古屋城など。また、大手門など人の目につきやすい場所には少ないので、普通に観光しても気が付かないかもしれませんが、堀に面した部分にちょっと目を凝らしてください。無数の刻印がされていることにきっと驚くことでしょう。ただし、江戸城や大阪城など規模の大きい城では堀越しに見ることになるため、がっつり見たい方は双眼鏡を持っていくとよいと思います。

 

 

刻印の理由

 

なぜ、これほど多くの刻印がされているのか。立場が違えば、事情も様々な訳ですが、突き詰めて言うと「お家存続のため」ではないでしょうか。関ヶ原の戦いでは、どちらが勝ってもおかしくない、という状況の中、家の存続をかけ、必死に戦いました。結果、徳川が勝利しましたが、たとえ徳川方についていたとしても、その後のお家存続が保障されていたわけではありません。

江戸幕府が全国の大名に江戸城や大阪城などの普請を命じたのですが、ご存じのとおり、江戸城、大阪城は1.2を争う巨城であり、大量の石が石垣に使われています。これほど大量の石がどこでもあるかといえば、あるわけがないんです。だからと言って無かったでは済まされない立場ですから、江戸城から遠く離れた伊豆半島、大阪城は瀬戸内から、海岸あるいは山中から石を切り出し、陸路海路と運んで行ったわけです。それに加え、加藤清正の熊本城などそれぞれの領地における自城の整備もあったわけですから莫大な労力と費用がかかるのは当然です。それでも命に従わなければ、あっという間に改易となってしまうことでしょう。そうならないためにも、必死になって普請に励み、限りある石の確保あるいは幕府へのアピールとして、印を刻んでいったのです。

つまり、刻印石は戦国武将達の血と汗と涙の結晶と言えましょう。

 

 

刻印石あれこれ

 

(それぞれの家に固有の刻印というのは少なく、あくまでも○○家と推定されるという程度)

 

①島津家・・・さつまいものことを「丸十」と呼ぶのは島津家の家紋にちなんで。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

②黒田家・・・独鈷とお金のような印。黒田家の家臣が使っていたようです。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

③毛利家・・・矢筈(写真の矢のマーク)や家紋の一文字三星を簡略化したものが多く使われています。「3本の矢」の逸話にちなんでかどうかはわかりません。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

④堀尾家・・・分銅紋と呼ばれる印。見栄えがよく格好いい。バットマンにちょっと似ていますね。堀尾吉治は出雲松江藩の2代藩主。築城名人としても有名。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

⑤尾張徳川家・・・「丸八」は名古屋市の市章にもなっていますよね。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

⑥「五芒星」・・・五芒星というと何やら妖しい感じですが、桔梗紋(清明桔梗)のことです。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

⑦「渦巻き」・・・ミステリアスな感じ。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

⑧経文「南無阿弥陀」・・・竹橋付近、江戸城の鬼門に当るところ。鬼門除けの意味あいがあります。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

⑨名前「工事掛川﨑兼信」・・・誰かは知りませんが、大胆だなおい。

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

⑩刻印三つ>・・・ファンの間ではよく知られた刻印。クオリティの低さといい、落書?

Exif_JPEG_PICTURE

 

 

まとめ

 

どうです? ここで紹介したのは全種類の1%にも満たない極々一部の刻印ですが、これだけバラエティーに富んだ印がひっそりと刻まれているなんて面白いと思いませんか? しかし、ひっそりと刻まれているにもかかわらず、その背景を思えば、強烈な主張を訴えてきているような気がしてなりません。それが私が石垣に魅かれる理由です。城を訪れる機会があれば、石垣にも目を向けて、こういった刻印を探してみてください。そこにはあなたの知らないワンダーランドが広がっていることでしょう。