blockImg_02

 

 

女優陣が豪華なことでも話題を集める映画「海街ダイアリー」を見たので、今回はその感想を書きます。

 

映画のあらすじはこんな感じです(週刊文春の「シネマチャート」より)。

          

    ◇     ◇

 

しっかり者の長女の幸(綾瀬はるか)、恋に生きる次女の佳乃(長澤まさみ)、自由奔放な三女の千佳(夏帆)は、鎌倉の古い一軒家に3人で暮らしている。父は15年前に家を出て、その後2人の女性と結婚した。その父の訃報が届き、山形で行われた葬儀で3人は、腹違いの妹のすず(四女)と出会う。父の連れ子のすずが継母と暮らすことを心配した幸は、一緒に暮らそうと声をかけ、4姉妹の生活がスタートする。鎌倉での日々は穏やかに過ぎていくが、すずは内心で自分の母親が3姉妹から父親を奪った罪悪感を感じていた。また、再婚のため家を去った母親(大竹しのぶ)が十数年ぶりに現れ、鎌倉の家を売ると言い出し騒動が巻き起こる。

 

     ◇    ◇

 

ざっくり言うと、離婚して家を出て行った両親を持つ3姉妹の元に、父親の死をきっかけに腹違いの四女が来て、一つ屋根の下で暮らし、色々おこる話です。

 

 

ドロドロは過去のもの、または過ぎ去るもの

 

main

 

 

「離婚」「腹違い」という言葉が出てくるので、ドロドロした印象を受けるかもしれませんが、実際は鎌倉の風光明媚なシーンが印象に残るさわやかな成長物語です。

 

出てくる登場人物も基本は善人で、そういったドロドロはなるべく排除して作られています。

たとえば、長女の綾瀬はるかは看護師で既婚の医師と関係しているのですが、肉体関係があるのかどうかも分からず、医師の家でごはんを食べたらさっさと帰るような清い不倫(?)です。恋愛好きの次女、長澤まさみもヒモみたいな学生と付き合っているのですが、これも修羅場を迎えることなくサラリと別れます。四女、広瀬すずは転校生として鎌倉の学校に来ますが、腹違いということが同じクラブの子に知られても、イジめられることなくすんなり溶け込みます。

 

どれもドロドロした展開にしようと思えば、いくらでもできそうですが、そういう方向には進みません。唯一、長女が本気で感情的になる場面も、大叔母である樹木希林がビシっと止めさせます。

 

ドロドロはもう過去の出来事、または足早に過ぎ去るものとして描かれます。

 

そういう意味で、この映画は現実的ではなく鎌倉を舞台にした「ユートピア映画」のようにも感じました

 

 

しっかり者の長女が実はいちばんの子ども?

 

 

maxresdefault

 

 

この映画のテーマ―の1つですが、「子どもが大人になる」ということはどういうことでしょうか?

 

色々な定義があると思いますが、私は親をいいところも弱いところもある一人の人間として認める、ことが重要なんだろうなあと思います。

 

長女の綾瀬はるかは「しっかり者」という設定になっていますが、彼女は長女という立場上、残された妹たちのためにもしっかり者にならざるを得なかったのです。長女は両親に「子ども時代を奪われた」と感じており、自分たちを捨てて家を出て行った両親を認めていません。

 

一方、次女と三女は「寮母」のような長女がいたから、わがままも言える「子ども」として生きられたのでしょう。成人した今、両親の関係とは自分の中で折り合いがついているようです。

 

「親をただの一人の人間として受け入れる」ことが大人になる条件ならば、姉妹の中で一番「大人」に見える長女こそが、実は一番いびつで「子ども」だと言えるのです。

 

しかし、そんな長女も最後には救われます。

 

長女は父親のことを「優しいけど、ダメな人」と評していましたが、ラストシーンでこの表現は少し変わっています。細かい違いですが、実は大きな違いで、長女が死んだ父親を受け入れ、両親の呪縛から解放されたことがよく分かるセリフです。

 

一見この映画は、長女が四女を救った物語に見えますが、実は、長女も四女によって救われているのです。四女役の広瀬すずは、能年玲奈にも負けないような「純真な美少女」としてスクリーンに映っており、その姿はまさに「宝物」。「こんな子が笑ったら、確かに救われちゃうなあ、えへへ」と思える高い美少女度で、物語に説得力を与えています。

 

 

おでこを出してあらわになる美人力

 

 

Haruka_Ayase_Cannes_2015Setsuko_Hara_smiling

 

 

ところで、「海街diary」は、これまでの是枝監督作品の中でも、最も小津安二郎映画の影響が出ているそうです。

 

私が「あ、小津だ」と感じたところは、綾瀬はるかがいつもおでこを出している点です。小津映画のヒロインもいつもおでこを出していますが、それは「清潔感」「気丈さ」「知的さ」などを表現するためでしょう。

 

綾瀬はるかもこの映画では、常におでこを出しています。湯上りのシーンでも前髪が上がっているので、その徹底ぶりは不自然なくらいです。おでこを出すと顔のつくりがあらわになり、髪型のごまかしが効かなくなるので、本当の美人でないとスクリーンでは映えません。是枝監督が、綾瀬はるかのことを原節子になぞらえているのがよく分かります。

 

「原節子って誰?」と思うかもしれませんが、キネマ旬報という映画雑誌で「20世紀の映画スター・日本女優編」の第1位になるような、知る人ぞ知る大女優です。ちなみに、小津安二郎は「家族」をテーマにした映画ばかりを撮った日本を代表する監督です。

 

     ◇     ◇

 

ただ家族関係が複雑なので、そこは少し分かりにくいかもしれません。四女のすずは父親の2人目の妻(登場シーンなし)の子どもで、葬式で泣いている中村優子は3人目の妻、大竹しのぶは1人目の妻で3姉妹の実母、樹木希林は大竹しのぶの母、という予備知識があると混乱しないと思います。公式サイトには分かりやすい相関図も載っています。

 

などと最後に文句も言いましたが、丁寧に作られたとてもいい映画だと思いました。美人な女優さんたちをスクリーンいっぱいに味わうためにも劇場でご覧になってはいかがでしょうか?