※この記事は2017年1月2日・9日合併号のタイヤ新報に掲載されたものです。

 

はじめに

 

 地域店が量販店やネット販売に苦戦しているのは、タイヤ業界に限った話ではない。いわゆる「まちのでんきやさん」も、ほとんど同じ境遇にあるのは想像に難くない。

 今回は特別企画としてでんきやさんの組合である全国電機商業組合連合会(電商連)の会長・北原國人さん(81)にお話を伺ってきた。

 価格問題、後継者不足などによる組合員の減少など、抱えている悩みの本質はほとんど同じだったが、それに対する考え方やアプローチは我々の業界とは少し異なるものだった。今後のタイヤ組合の在り方を考える上で、少しでも参考にしていただければ幸いである。(針谷)

 

北原國人会長

北原國人 会長

 

全国電気商業組合連合会のHPはこちら
http://www.zds.or.jp/

 

組合員の減少

 

―組合員はどれくらいなんですか?

 

 『沖縄県を除く、全国46都道府県に単組がありまして、15年ほど前までは3万3000件、現在は1万6000件を切りました。そのうちの4割くらいは後継者不足が原因です。新しく電気屋をやろう、という若い人が出てくればいいけれど、今ひとつ難しいですね。子どもが親の姿を見て「あんな苦労はしたくない」という人は他所に行っちゃう。これはどこでも同じだと思いますね。』

 

―「メリットがない」と言って抜けていく人は多いのですか?

 

『そういう人もいますね。こちらも「メリットは自分で作り出すもの」という理屈は言いますけど、全国にしても、単組にしても、リーダーが常に新しい事業をしているべきだとは思います。

例えば2011年に地デジへの切り替えがあった時は、全国の組合で団結することが出来た。が、それが終わるとまた不満が出る。常にリーダーが新しいことを呼びかけていないといけない。今は沖縄にも単組を作る取り組みをしていて、年明けには何とか形にしたいと考えています。』

 

資格の問題

 

―電器屋さんを始めるには何か資格などは要らないんですか?

 

 『特別な資格が必要というわけではないので、極端に言えば誰でもお店を開くことはできます。ただ、電気工事は工事士の資格を持っていないと出来ません。コンセントひとつ付けるのにも本当は資格がいるんですが、それも無いのに付けてしまう人は大勢います。これは違法なんですが、お客さんはそれで良しとしている。』

 

―誰でもできてしまうのですか?

 

 『はい。資格がなくてもできてしまう。私は資格については少し変わった考えがあって、では、資格を持っている人はそれを活用できているかというそうでもない。資格は持っている人の思いだけで、お客さんには関係ないんです。

 昔はテレビの修理をするにも国家資格が必要でしたが、今はそれがなくても直せてしまう。それよりも大切なのは知識。自分が身につけた知識は誰にも盗まれません。私はそうした格付けに拘らず、ともかく知恵をつけて学ぶ電器店になろう、と盛んに言っています。』

 

スマートライフ・コンシェルジュ

 

 『現在は私の発案で家電の知識を今までより高いレベルで勉強し組合員で共有しようという主旨で「スマートライフ・コンシェルジュ」という講習会を実施しています。これは2016年で3年を迎えました。』

 

―どんな内容の講習会なんですか?

 

 『主に省エネや創エネなど環境問題を取り上げています。例えば、ただ「古くなったからテレビを買い替えましょう」と言うのではなく、「昔のテレビと今のテレビだったら消費電力をこれだけ節約できます」という切り口で訴える。その時に電気屋さんが環境問題を多少なりとも論じられる頭にならないと、これからは付いていけないよ、と。』

 

価格問題の対策

 

―仕入れより安い値段で商品がネットに出回っていることについてメーカーに抗議はしているんですか?

 

 『家電6社のメーカーには「おかしいじゃないか」と抗議を申し込んだり、年に3回ほどメーカートップと営業首脳の方と懇談の場を作ってもらっていますが、中々それ以上は踏み込めません。「ネットに売られちゃう」と嘆くばかりではなく、自分で勉強をして時代の流れに乗ることが大切だと思います。

 これから高齢化はさらに進みますが、高齢者は量販店で店員に何か聞こうにも、そもそも今の時代の家電が分からないから質問もできないことが多い。町の電気屋さんに行けばお茶を淹れてくれて、自分の要望をそれとなく聞き出してくれる。そうした需要を取り込めれば、充分に生き残っていけるし、私は「この業界は夢がある」とよく言っています。値段では負けてしまいますが、我々の価値を認めてくれる人はいる。』

 

青年部の活動

 

―青年部の活動について教えてください

 

 『2016年10月に初となる「全国青年部サミット」を開催しました。全国から300名以上の若手組合員が参加し、我々の10年後のあるべき姿やネット販売への対策について、全27グループに分かれて討議してもらいました。今後は我々ではなく、若手が次世代を担っていくので、彼らにやりがいを感じてもらえる組織にする必要があります。』

 

今後の組合の在り方

 

―今後の組合の課題について教えてください

 

 『全国から各地の理事長が集まる会合も今までは年に4~5回はしていたのが、経費削減で2回ぐらいに減ってしまった。本来なら意思疎通をきちんとするにはもっと回数を重ねないといけないのですが…。

 今はテレビ会議などで組合の活動を見えるようにはしていますが、ただ、こちらがいくら頑張っても各単組の理事長が情報を下に流さないと、なかなか浸透しづらい。必死になってやる人がリーダーにならないと連携が難しいので、今後はそこの風通しを良くしていくことが課題ですね。』

 

―最後に、今後の地域店の在り方について考えていることを

 

 『我々の業界のいいところは商材の種類が抱負なので、売るものがいっぱいあることです。なので、能力のあるお店はお客様の家一軒をサポートすることも出来る。メーカーからは次から次に、今まで想像もしなかった付加価値の高い新商品もどんどん投入されるので、仕事はいくらでもある。そうした家電の知識をきちんとお客様に説明することができる電器屋だったらまだまだ生き延びていけると思います。』

 

まとめ

 

 写真の「命知」という書は松下幸之助の言葉で、北原会長の座右の銘。自分の使命を知った年のことを「命知元年」と言うのだそうだ。

 北原会長は1960年に長野県で㈱キタノヤ電器を創業し、81歳となった今でも現役で毎日出社している。

 『現場のことが分からないと人様に指令ができない。若い連中に負けないぞという気持ちでやらないと駄目ですね。』

 地域店の「使命」はまだまだある。そう感じさせてくれる取材だった。