住友ゴムは、2015年7月6日、神戸大学総合研究拠点(神戸市中央区港島南町)で、プレス向けに「ADVANCED 4D NANO DESIGN(アドバンスド・フォーディ・ナノ・デザイン)」開発進捗状況の説明会を行った。「4D NANO DESIGN」はコンパウンド等に使う材料開発を行うための技術だが、それがどう「アドバンス(進歩)」して、どういう効果が見込まれるのかレポートする。

 

プレスセミナーには、村岡清繁氏(同社執行役員 材料開発本部長)、若林昇氏(材料開発本部 材料第三部長)、石田博一氏(材料開発本部 材料企画部長)ら3名が出席した。

 

 

ゴムの内部をコンピューターで再現

 

 

B[エトキ]=理化学研究所では「アドバンスド」世界の体験も。気分は『ナノの決死圏』

 

 

そもそも、「4D ナノデザイン」とは何であろうか?

 

一言でいうと、ゴム内部をコンピューターで疑似的に作り上げ、実際のゴム設計に生かす技術で、2011年に住友ゴムがスーパーコンピューター「京(けい)」などを活用することで完成させた技術だ。

 

では、「4D ナノデザイン」は目に見えない世界をどうやって再現するのだろうか? 例えるならそれは、与えられた情報で人の顔を作り上げていくことに似ている。

コンピューターに「目の大きさは何センチで、両眼は何センチ離れて…」とデーターを入力していけば、ある程度人の顔を予測し、再現することはできる。

4Dナノデザインも、大型放射光施設「SPring‐8」で取得した膨大な構造解析データーをもとにナノの世界を再現している。

 

タイヤの能力はトレッドやコードなど目に見えるものでも左右されるが、目に見えないナノの世界でも左右される。トレッドがどんなに秀でたものであっても、コンパウンドがイマイチではタイヤの性能もイマイチになってしまう。

 

ナノの世界を見通す「目」は高性能タイヤを開発する上で欠かせない視点なのだ。

 

 

情報を処理を行う頭脳がスーパーコンピューター「京」

 

 

 

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膨大なデーターがあっても、再現できなければ意味がない。その目のくらむような情報量を処理してナノ世界を疑似的に作りあげる頭脳がスーパーコンピューター「京」である。

 

そして、目下開発中の「アドバンスド」は「SPring‐8」のデーターに「J‐PARC」という中性子実験施設で得た運動解析データーも加わるため、よりリアルにナノ世界を再現できるのだ。

 

 

森と木を同時に観察する

 

 

C[エトキ]=「アドバンスド」は全ての領域の「動き」と「構造」を一度に解析できる

 

 

「リアルに再現できる」ということは、デジカメで言うなら、解像度が高くなったことに近い。人間の集合写真を撮った時、解像度が高ければ、全体を写しながら、一人一人の表情も確認できる。

 

従来の「4Dナノデザイン」では、ナノメートルの世界を再現したら、それより大きいミクロンメートルの世界は再現できなかったのである。

 

しかし、「アドバンスド」は情報量も増え、その処理能力も増えた(「京」自体の成長)ので、ミクロンメートルの世界を観ながら、ナノメートルの世界も観ることができるようになった。森を観ながら木を、木を観ながら森を観察できるようになったということだ。

 

 

 

タイヤ性能間の「最適解」を追求

 

 

ではミクロンとナノを同時に観察できると何がいいのか? ゴム内部で相反する性能の「ちょうどいいところ」(最適解)を求める時、全体の原子・分子運動を把握しながらも、個々の原子・分子に注目することが大切で、それは個々のタイヤ性能とスケールの一部が重なっているため…

と言っても、分かりにくいがとにかく「あちらを立てれば、こちらが立たず」はゴム内部世界でも一緒、全体と細部を同時に観られれば、「現状もっともよいバランス」を求めやすくなるということだ。

 

 

東京モーターショーで発表、2016年から商品応用

 

 

 

D[エトキ]=ポリマー分子が剥離され、破壊が進む様子を可視化

 

 

「アドバンスド」を使用したタイヤ性能はどう向上するのだろうか?

 

まず、相反する性能の「ちょうどいいところ」を求められるようになったので、グリップ、燃費、耐摩耗性能など総合性能の向上が期待できる。

 特に破壊現象はナノとマイクロの領域にまたがって起こる謎が多い現象だったそうだ。しかし、「アドバンスド」ではその「見える化」に成功したので、破壊現象の解析を大幅に促進することで、それを抑制する新素材、新配合の開発が可能になるとのことだ。

 

「アドバンスド」の開発は順調に進んでいるようで、今年10月の東京モーターショーで発表、2016年以降に実際の商品に応用していく予定だという。