安全と静かさの両立のために

 

 

 

氷和

 

 

ブリヂストンの新プレミアムタイヤであるレグノ「GR‐XI」「GRV2」の技術説明会がこのほど開催され、氷室泰雄氏(イノベーション本部デザイン企画部部長)と和氣充幸氏(タイヤ研究部音振研究ユニット)の両氏が説明にあたった。

 

 

水を出すと音が出る?

 

 

「夏タイヤの第一の使命はハイドロプレーニング現象を起こさないことです」と氷室氏は語る。

どんなに静粛性に長けたタイヤができても安全性がイマイチでは消費者に受け入れられない。1981年に誕生したレグノは、時代の変遷とともに様々な進化を遂げてきたが、それも一定の排水性を確保し、安全性を基盤とした上での話だ。

さて、夏タイヤのトレッドにおいて排水の役割をメインに果たす溝といえば中央に刻まれたストレート溝。一般的に太く深い溝ほど、それだけ水を排出する力も強くなる。しかし、太く深い溝であればあるほど静粛性は損なわれる。排水性と静粛性は相反するのだ。

それでは、太く深い溝がなぜ静粛性を損なうのだろうか?

 

管楽器としての音(パターンノイズ)

 

 

パタンの溝が原因で発生するノイズはパタンノイズと言われている。

『タイヤと路面の接地面は圧力で平らに近くなりますが、その時溝は地面でフタをされ、瞬間的にパイプのような状態になります。走行時、空気がその管に入り込むと管楽器の原理で「ヒュー」「シャー」という高音を発するのです』(和氣氏)』

パタンノイズは1000Hz程度の周波数を発することが多い。電話の受話器がはずれたままの時に鳴る警告音、あの音が1000Hzに近いという。

『高周波の音は人に注意を向けるときには効果を発揮しますが、「不快」と認知されることが多い』と和氣氏は語る。

 

 

溝の音は溝で消す

 

 

 

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先に記したように、静粛性を確保するために排水性を犠牲にしたのでは意味がない。主溝を細く浅くして、音を抑えるのは本末転倒ということだ。いかに排水性を確保したまま、ノイズを軽減するか? この難題を解決したのが音響工学の利用だった。

『溝から出る音を、新たに溝を入れることで閉じ込める。サイレンサーの役割を果たす溝を入れることでレグノは新時代を迎えました』(氷室氏)

 07年に発売されたGR9000にはサイドブランチ型消音器という技術が使われた。ブランチという単語は「枝」を意味する。タテの主溝を「幹」とした場合、そこから枝のように派生した横溝がサイドブランチ型消音器にあたる。難解な音響工学の話は割くが、この横溝を入れることで、レグノは人が不快に感じる特定周波数を分散させることができるようになったのだ。

 

 

ダブルブランチ型の長所

 

 

 

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GR9000の発売から5年を経て、11年に発売されたGR‐XTでは、サイドブランチからヘルムホルツ型と呼ばれる消音器技術が採用された。

ヘルムホルツ型の利点はサイドブランチ型より小面積で済む点だ。GR9000では4本の主溝に対して、2つしか配置できなかった消音器が、XTでは4本の溝それぞれに配することができた。

しかし、またここで別の課題が発生する。

『2つが4つになったのですから、GR‐XTの静粛性はもちろん向上しました。しかし、溝を多くした分、トレッドの剛性は若干下がり、ハンドリングには向上が見られなかったのです』(氷室氏)

「グレートバランス」を名乗るレグノとしてこの問題は放っておけない。新商品「GR‐XI」と「GRVⅡ」に採用されたダブルブランチ型消音器は見事この課題をクリアした。

先の通り、ブランチ型はスペースを取るという問題があったが、ダブルブランチ型は1つの消音器で左右両方の主溝をカバーできる。新商品は、2つの消音器で4つ全ての主溝をカバーすることで、静粛性のみならずハンドリング性能も向上したのであった。

 

 

打楽器としての音(ロードノイズ)

 

 

 

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タイヤが発する音は大きく分けて2つある。1つが今まで説明したパターンノイズで、もう1つがロードノイズだ。

ロードノイズとは、タイヤと路面が接地することで発生する振動が、トレッド、ベルトと伝播した結果、車内に響く音のことだ。パタンノイズが管楽器的な高周波ならロードノイズは「ゴー」「ガー」といった打楽器的な中・低周波の音になる。

振動が原因で発生する音なら、振動を抑えれば音も減少できる。「トレッド→ベルト→車内」というのが振動(ロードノイズ)の流れなので、ベルトの振動をおさえれば、車内に伝わるノイズも軽減できるのだ。

新商品に採用された「ノイズ吸収シートⅡ」の正体は、ロードノイズを抑える高剛性ベルトのことである。

GR‐XIはシートの配置場所も、コンパクトカーサイズとセダンサイズで異なっているという。

『走行時の振動を分析した結果、コンパクトカーとセダンで揺れるポイントが違うことが分かりました。コンパクトカーサイズでは、ベルト部全体が振動するので、吸収シートは全幅に配置しています。一方、セダンサイズは特にショルダー部が振動するので、吸収シートはショルダー部のみに配置し、最適な効果を得るようにしました』(和氣氏)

 

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以上、パターンノイズとロードノイズの違い、またそれを抑えるデザインや技術の違いを解説した後、説明会の最後を和氣氏は以下のように締めくくった。

『大好きな方、大切な方とのドライブがタイヤの騒音で台無しにならないようレグノは進化を遂げてきました。車内の静かな環境に特に価値を認めるお客さまにはレグノという商品は自信を持ってオススメできる商品だと自負しております。今日は御清聴ありがとうございました』